2018年11月09日

本の紹介「談志 最後の落語論」

dansi.jpg

 落語家、立川談志さんの著作です。2009年に出版された

ものが、この度、文庫化されたものです。

 談志さんの没年が2011年ですので、お亡くなりになる2

年前に書かれたものです。

 二〇代の最後の年に「現代落語論」を上梓され、このままで

は落語は能とおなじように、大衆からどんどん離れていってし

まう芸能になるという危機意識を表明されました。

 1983年、真打昇進試験の基準を巡って師匠や落語協会と

対立し、弟子一同を引き連れて脱退し、落語立川流を創設、家

元となられました。そしてその2年後、40歳代で続編の「あ

なたも落語家になれる 現代落語論 其二」を書かれました。

そして73歳のときに、この「最後の落語論」を著わされまし

た。

 談志師匠はこの本で落語とは何だと、落語を定義されていま

す。「落語とは、人間の業(ごう)の肯定である」と。

 また別の言葉で表現すると「落語とは、非常識の肯定である」

と。落語の根底にあるのが、常識に対する非常識で、それを

「業(ごう)の肯定」という言い方をしたのが、若き頃の談志

であったと、振り返っておいでです。

 年末になると毎年恒例になっていたのが、談志の「芝浜」で

す。暮れになると聴きたくなるのが「談志の芝浜」となり、毎

年客が詰めかけていたそうですが、演じるたびにその内容や、

話のなかの「女房」の気性が変化していたそうです。

 「芝浜」、もう一度じっくり聴きたいものです。


         藤井直和


posted by フジシステム at 13:56| ひとこと

2018年11月08日

本の紹介「光秀からの遺言」

mituhidekara.jpg

 副題が「本能寺の変436年後の発見」です。本能寺の変の

後、明智残党狩りの手を逃れた光秀の子・於寉丸(おづるまる)

の子孫と伝わる明智憲三郎氏の著書です。「歴史捜査」という

手法で光秀の事績を研究されています。研究の成果の著作も6

冊目です。このブログでご紹介するのも4冊目となりました。

 本の帯にも「末裔による歴史捜査、ついに完結」とあり、N

HK大河の2020年「光秀」に決定!とも書かれています。

 本能寺の変から436年後の発見は「信長はどうして最後の

最後まで光秀が謀反を起こすと気づかなかったのか」の答えの

ようです。

 光秀の出自と前半生はほとんど不明である。にもかかわらず

なんとなく定説となっている話が沢山あるそうです。その中に

は信長が光秀を殴ったり、領地を取り上げたりと散々苛めたこ

とで光秀が恨んで謀反をおこしたとする怨恨説のエピソードも

ふんだんに書かれているそうです。それは「明智軍記」という

物語に書かれていて創作であると断言されています。     

 光秀の没した年齢も定かではないのですが、筆者は享年67

歳説をとっておいでです。67歳と仮に定めて光秀の人生を追っ

ていったときに、これまで「定説に合わない」として無視され

てきたことがすべて辻褄が合うと記されています。    

 イエズス会アジア地区責任者の巡察師ヴァリニャーノが通訳

としてルイス・フロイスを伴って上洛した。信長は彼らを歓待

し数カ月滞在したそうです。親密に交流を続けたそうで、少な

くとも4回は信長と会った記録があるそうです。その時に信長

の口から重要なことが語られたそうです。さてそれは………。


          藤井直和


posted by フジシステム at 17:34| ひとこと

2018年11月05日

本の紹介「徹底検証 神社本庁」

tettei.jpg

 朝日新聞の記者で、AERA編集部にも10年余り在籍され、

現在は編集委員をお務めの藤生 明氏の著作です。

 神社本庁とは何か? 本庁という役所っぽい名前だが、れっ

きとした宗教法人、つまり民間の組織であるとのことです。

 宗教法人は包括宗教法人と被包括宗教法人とに分けられる。

前者は、寺社などを束ねる宗派・教団のことで、後者は、そこ

に加わる寺院や神社などを指すそうです。本書では、神社の大

半を包括する神社本庁を検証の対象とされています。

 神社本庁は、建国記念の日制定、靖国神社国家護持、元号法

制化、国旗国歌法制定等に取り組んできて、戦後保守の中で果

たしてきた役割は一目瞭然であると記されています。そうした

運動の中心にあり、全国約八万の神社を束ねる神社本庁、その

中枢では今、何が起きているのか、いったい何を目指している

のか、その成り立ちをも含めて明らかにされています。

 神社本庁とともに国民啓発運動に取り組んできたのが「日本

会議」である。神社本庁が時に頭になり、時に手足となり、緊

密な連携を保ちながら両者は保守運動を牽引してきた。この両

者の関係についても明らかにされています。

 神社界の政治部門として「神道政治連盟」があります。19

69年に結成されていますが、この神政連が政治家の選挙で機

能しているそうです。国会議員による議員連盟がつくられてい

ます「神政連国会議員懇談会」といい、会長には現職首相を戴

き、300人前後の議員が名を連ねるメガ議連となっているそ

うです。

 神社本庁から離脱している有名神社が沢山あるそうです。東

照宮、加藤清正を祀る加藤神社、気多大社、明治神宮、梨木神

社や、あの富岡八幡宮も離脱しているそうです。武運の神八幡

大神の総本宮の宇佐神宮とは10年に及ぶ紛争があるそうです。

 神社本庁は緩やかな連帯から始まったはずなのに、今や全国

の神社や神職を支配下に置き、多額の負担金を奪うシステムへ

と変質してしまったとの批判もあるとのことです。


         藤井直和

posted by フジシステム at 15:49| ひとこと

2018年10月29日

本の紹介「未来の稼ぎ方」

mirainokasegi.jpg

 坂口孝則氏の著作です。調達・購買コンサルタントという聞

きなれない肩書をお持ちです。未来調達研究所株式会社の役員

さんで講演家ということです。

 本書は、2019年から2038年までの20年間について、

象徴的な業界をとりあげ、それぞれ何が起きるか予想しうるも

のを具体的に書いたと記されています。業種としても多様な範

囲をカバーされています。

 本書の特徴を3点あげておいでです。@統計・データをもと

に書いている Aデータ源を、できるだけ誰もがアクセスでき

るものとしている B各年度で一つの業界を広範囲にとりあげ

ている というものです。たいへん解り易くお書きです。

 筆者の狙いは「本書が、好奇心を満たすだけではなく、読者

が変わりゆく世界に身を投じ、批判的な思考を通じて、これか

らの稼ぎ方、これからの闘争を遂行する起点になればうれしい」

ということです。

 今から8年後の2026年の節では「若者マーケティングの

キーは、SNSと愛国になる」というテーマで論じておいでで

す。その中で、一橋大学の野口悠紀雄先生の主張を紹介されて

います。80年代までの終身雇用を前提とした構造の説明の後、

「もはや企業は終身雇用を約束できなくなり、非正規労働者が

増え全体の4割にも及んできた。企業に帰属しない若者たちは、

どこに拠り所を求めるのか。それは、『日本国』だ。国に対す

る依存が強まり、歴史上初めて、人々が国に帰属意識を持つよ

うになった。」とのことです。


         藤井直和


posted by フジシステム at 12:41| ひとこと

2018年10月23日

本の紹介「AI時代の新・地政学」

aijidaino.jpg

 宮家邦彦氏の著作です。氏はテレビの討論番組などにご出演

です。外務官僚で外国大使館勤務が豊富で、国際的なインテリ

ジェンスに長けておいでです。現在はキャノングローバル研究

所の主幹でいらっしゃいます。宮家さんの本は今回初めて読ま

せていただきました。

 筆者がいま、最も注目しているのがAI(人工知能)革命だ

と記されています。AIといえば、日本では専ら経済活動への

応用、諸外国でも軍事戦術面での活用が取り沙汰されるのがせ

いぜいである。しかしAIは、軍事面での人間の関与を低下さ

せ、国家間の地理的距離を変質させるとういう点で、地政学上・

戦略論上の「ゲーム・チェンジャー」となりえる要素だ。AI

革命が伝統的な地政学的思考に如何なる影響を及ぼすのか、こ

れが本書全体を貫くテーマであると書かれています。

 AI革命による地政学セオリーの大変化をいち早く理解し、

適切に対処すれば、日本は世界の一流国として21世紀に生き

残っていけるかもしれないとのことです。

 差別的、排外主義的で、不健全かつ時に暴力的な大衆迎合型

ナショナリズムがある。筆者はこれを「ダークサイトの覚醒」

と呼んでおいでとのことです。

 昨今のAI革命でも新たな「ダークサイド」が覚醒していな

いだろうかというのが、筆者の問題意識だそうです。

 そんなことを底流に、AI革命と国家間関係との関わりを論

じておいでです。それは米中関係、米露関係、更には日韓、日

朝、日中関係におよんでいます。

 その中で面白い例えをされています。「そもそも北朝鮮を如

何に見るべきか。あれは国家などではなく、従業員2500万

人以上の巨大な超ファミリー・ブラック企業だと考えた方が良

さそうだ」と。
 

         藤井直和


posted by フジシステム at 10:54| ひとこと

2018年10月19日

本の紹介「姫君たちの明治維新」

himegimi.jpg

 岩尾光代氏の著書です。岩尾さんは1946年のお生まれで、

文部省にお勤めだったのを毎日新聞社出版局に転出されたそう

です。主な仕事に「一億人の昭和史」シリーズを10年間編集

し歴史写真の考証、発掘を行われたそうです。そのせいか、本

作品にも幕末から明治にかけての姫君がたの貴重な写真が数多

く掲載されています。

 この本には、その美しい姫君たちの強く気高く、少し儚き運

命が記されています。全部で31人の姫君が登場されますが、

お名前を始めて聞く方も多くあります。

 明治維新時、日本中にはおよそ190の城があったそうです。

このうち、徳川幕府の城は江戸・大坂・二条・駿府・甲府の五

つ。江戸城は無血開城だが、大坂城は鳥羽伏見の戦いの時に炎

上しました。

 江戸城は無血開城し、大名たちは城を去り、奥で暮らしてい

た妻たちも城外で生きることとなりました。江戸城からは天璋

院、和宮、将軍の生母たちが立ち退いて、新たな人生を送るこ

とになったのでした。

 本書に最初に登場されるのは、徳川十三代家定夫人の天璋院

と十四代家茂の夫人の和宮です。江戸城無血開城の影の功労者

とされています。十五代、最後の将軍となった慶喜を推す和宮

とそれに反対する天璋院は意見の食い違いで対立していました。

だが慶喜の大政奉還から江戸城での恭順が決まってからは、天

璋院と和宮は、それまでの確執を捨てて徳川家存続と平和裏の

政権移行をともに目指したそうです。


         藤井直和


posted by フジシステム at 17:17| ひとこと

2018年10月16日

本の紹介「仏教論争」

bukkyouronnsou.jpg

 テレビのトーク番組などに数多く出演されています宮崎哲也

氏の著作です。

 仏教の「縁起」をテーマとされた本です。縁起が仏教の始点

であるとのことです。「縁によって生起する」または「縁って

生起する(よってせいきする)」とは、何によって何が生じる

ことなのか。「依存して生起したもの」というが、何かの縁に

よって生じる、何かに依存して発生するということがあるとし

て、これが思想的に、宗教的にどんな意味を持つのか。私たち

の生のあり様にいかに関わってくるのか。という問題を提起さ

れています。そして、どうしてかかる単純極まりないように見

える法則の発見が、2500年もの歴史を誇る仏教の始点に当

たるといえるのだろうかと記されています。

 仏教の核心を「縁起」からその本質を問うておいでです。過

去の仏教論争である、第一次縁起論争に遡り、古寺巡礼の筆者、

和辻哲郎や哲学者の三枝充悳(さいぐさみつよし)の論争を概

観されています。

 2011年、真宗大谷派は宗祖親鸞の750回遠忌に向けて

のテーマとして「今、いのちがあなたを生きている」を掲げた

と書かれています。大谷派の門徒をはじめ、これが東本願寺に

大きく掲示されたり、同朋新聞という門徒向けの機関紙にも掲

載されているのを見た人が「いのちがあなたを生きる」とはど

ういう意味かと首を傾げたとのことです。

 真宗大谷派だけに限らず、仏教界全体として「いのち」「生

命」をまるで諸価値の源泉であるかのごとく扱っている例は多

くあるそうです。しかし、哲学者で浄土真宗本願寺派住職の松

尾宣昭氏は「仏教は生命讃歌の教えではない」とはっきりと述

べておいでだということです。

         藤井直和


posted by フジシステム at 16:16| ひとこと